キズだらけのぼくらは



助けるなんて、私には無理……。

私は教室を背に立ち止まって、下唇を噛み締める。

するとその時、誰かと争ったみたいにワイシャツの胸元をはだけさせた新太が、私の横をゆっくり通り過ぎていった。

「いい加減にしろよ。みっともないと思わないのか?」

新太は教室に入るや否や、圧力を感じる低い声で秋穂に言い放った。

「はっ? みっともないのはこの女じゃない。誰に言ってんの?」

「もちろんお前にだ。」

秋穂の言葉に、新太は余裕も与えずにきりかえす。

勝ち誇ったように笑う秋穂の笑みが、その一言で凍りついた。

「さっさとこんなくだらないことやめろ」

そんな中でも新太は、着実に結愛の元へ向かっていた。

クラスのみんなは、驚きのあまり目を丸くする。

でも、秋穂は気に喰わなそうに新太を睨みつけた。

「もしかして、ふたりともデキてるわけ? この女、まだ男がいたんだ。さすが、落ちぶれてもドロボー猫だけのことはあるわ」