「ほ~ら、よくきれいにしてあげるから」
床に転がされた華奢そうなブルーのバケツと、凶器のように柄の長いモップが目に映る。
それらを見るだけで、胸が苦しくなっていく。
だけど、彼女は容赦なくトイレのモップを私の顔に強く押しつけた。
たっぷり水を含んでいたモップは、押しつけられた瞬間に多くの水を吐き出して、私の顔を滝のように流れていく。
目の奥が熱くなったような気がしたけれど、冷たい水のせいでよくわからない。
今は、わかりたくもないし、認めたくもなかった。
抗う力もみなぎってこなくて、背後のドアに寄りかかり、ふたりにされるがまま。
「口もよく洗っといた方がいいんじゃない?」
私を押さえている女子が口をはさむ。
「いいね~。ほら、口開けば?」
すると、モップを私の口にめり込ませるように、無理矢理つついてきた。
力任せにこじ開けようと擦りながら動くモップの先。
私は、歯を食いしばり唇をきつく結ぶ。


