バケツはこちらに大きな口を向け、その中から透明の水が勢いよく飛び出した。
目を見開いた時にはもう遅かった。
水の大群が、私をめがけて襲いくる。
目を閉じる暇もなく、水は私にぶつかって派手に弾け飛んだ。
私はただ突っ立っていることしかできなかった。
女子ふたりが高らかに笑う。
体中が濡れて不快感が広がる。
一気にエネルギーを失ったみたいに体が冷える。
ふたりが憎らしいのに、私には動く気力がなかった。
力なく下がっている手の指先からは、いまだに水が滴り落ちる。
一秒一秒時を刻むように、タイルを打つ水滴がぽたっぽたっと音を出す。
私は前髪の隙間から数メートル先にある洗面台の鏡を見た。
笑って揺れる彼女たちの背中の間から、まるで死んでいるような私が見える。
肌は変に青白く、髪は重々しく顔に貼りつき、もみ合ったせいでブラウスはみすぼらしくよれたまま肌にぴったりとくっついていた。


