薄い板をガンガン叩かれて、壁が激しく揺れる。
小さい空間には、その音が何十倍にも共鳴した。
「誰!? 誰がいんの!?」
「聞いてたんじゃないでしょうね!? 早く出てきな! 早くっ!」
焦った彼女たちが早口でまくしたてる。
壁がぶち壊されそうな騒音と、金切り声。
鬱陶しいその音が、頭の中心にまで響く。
薄暗い小さなこの箱の中は、狂った音でいっぱい。
いつ壊れるともわからない壁が、ギシギシと悲鳴を上げる。
もう、逃げ道もない。
どこへも逃げられない。
けれど私は、そんな騒がしい音なんて、ちっとも痛くもかゆくもなかった。
そんなことされたって苦しくもない。
私は、手の甲で乱暴に涙を拭いさった。
今の私にあるのは、そんな腐ったヤツへの憎しみだけ。
憎くて憎くて、怒りが溢れ出る。
だから私はドアノブを力をこめて掴んだ。


