もうひとりの女子は声を落として言った。
壁のせいでクリアには聞こえづらい。
気持ちは逸り、より一層心臓が騒ぎたてる。
「そう、秋穂。みんな言ってるよ、あのIDはきっと秋穂だったんだってね」
犯人は、秋穂……?
黒板に書いたのも、みんなに情報を流したのも、全部秋穂の仕業?
私は骨がなるくらい、強く強く拳を握った。
胸の内に悔しさがこみ上げる。
秋穂は、結愛にあんな仕打ちをして、その上あんな暴露まで。
「ふざけんなっ……」
気づいたら、喉から声を絞ってそんなことを言っていた。
「……なに? 誰かいたの……?」
「だっ、誰よ!?」
女子たちの上擦った声が、なんだか近くなってくる。
でも、私は足元を見つめ、黒っぽいタイルが歪んで映るのをただ見ていた。


