壁があって見えなくても、私は眉間にきつくしわを寄せて睨んだ。
女子らしい高い笑い声がまた響いて、膝の上に置いた手がうずうずしている。
できることならば、今すぐに殴りこみに行きたかった。
けれど、勝てないことなんてわかっているから、今はぐっと堪える。
「でもさ、今回の犯人誰だと思う? LINEのID、誰のものなのかわからないままじゃん」
犯人……?
その話題が気になって、聞くことだけに神経を集中させる。
自分の存在に気づかれてしまわないかという不安から速まる心拍数さえ鬱陶しい。
そんな緊張の中、耳を壁にピタリとくっつけた。
「えー、わかんないの? そんなの簡単じゃない。あんなくだらない情報を調べ上げる暇があって、別IDまで作って人を陥れそうな人間なんて、限られてるじゃん」
私は息をのむ。
私たちはなんにも知らないのに、犯人が知れてる?
「誰よ、それ。もしかして……」


