私は階段を急いで下がった。
でも、さっき行ったばかりなのに、どこにもいない。
ついには1階まで来てしまった。
まったく、逃げ足が速いヤツ。
授業中だからさすがに人気はない。
私は左右に広がる廊下を、交互に見渡した。
すると、右側の数メートル先に背が高くて細身なアイツが見える。
「ちょっと待ちなさいよ」
声をおさえながらも、必死に呼びとめる。
額には汗までかいてこっちはこんなに必死なのに、アイツは私を一瞬見て意地悪っぽく目を細めて笑うだけ。
止まってなんかくれなくて、スタスタと前へ進んでいってしまう。
私は苛立ちながらも彼を追った。
やっと横までたどり着いた私は、膝に手をついて息を整える。
「待ちなさいって、言った、じゃない……」
私の声は切れ切れだった。
なのに横にいたはずの彼は私を待たずに、また歩きだしていた。


