私はもう一度彼を睨んだ。
すると彼はイタズラに笑い、本をめくる手をピタリと止めた。
そして本を片手の上に広げたまま、私の方へとゆっくり歩いてくる。
「ふーん、おもしろい。その証拠は?」
彼は機嫌がよさげに、やわらかな声で私に問いかけた。
その頃には私の横に立ち止まっていて、頬笑みながら私を見下ろしている。
前髪が垂れて瞳はよくのぞきこめない。
でも私は恐れずに彼を見上げて言った。
「私たち3人のことをあんなに知ってるのはアンタしかいない。どんなルートからか知らないけど、ネットにいる私たちの素性をアンタだけは知ってた。それだけでもおかしいじゃない」
私が食ってかかるように言っても尚、彼は涼しげな顔をして私を見ている。
だから私は更に感情的になって、こう言い放った。
「あのサイトだって、こういうことをするために作ったんじゃないの? あんな妙なサイト。私たちを挑発して本当の気持ちを吐き出させて! その時点から、私たちはアンタの罠にまんまとはまってた。そういうことじゃないの?」
言いたいことを一気にコイツへ浴びせてやった。


