キズだらけのぼくらは



彼は提げていたカバンを乱暴にテーブルの上に放ると、呑気に両腕を頭の後ろで組み、図書室内を闊歩し始めた。

「まずさ、お前ら頭悪いの? あんな暇人が好きそうなこと、俺がわざわざやるわけない」

くっくっと喉で笑いながら、優雅に本棚の前を行き来する。

時には小さくしゃがみこんで、本の背表紙に手をかけては表紙をちらりと見て元に戻していた。

結愛はまた背中を丸めているし、新太はもうアキムのことを見ずに瞼を閉じていた。

「それに、もし俺が犯人だったとして、「はい、そうです」って言うヤツがいると思うか?」

彼は本棚から文庫本を取りだすと、その繊細な指で本をしならせてパラパラ漫画のようにめくった。

本は扇状に広がって、めくり終わってしまえば彼はその動作を繰り返した。

弄ぶように、何度だって。

なんなんだよ、その態度……。

私たちはこんな窮地に立たされているというのに、そんなもので遊んでいる彼に怒りをかきたてられる。

「こんな時にまで、私たちを弄ばないで。犯人はアンタ以外あり得ないの」