こんな時に思いだす。
雨の日の放課後、泣きそうだったアイツを。
薄暗い教室で、そっと手を伸ばそうとした自分の指先を。
なんで、同情なんてしたんだろう……。
力の抜けた指先から、スカートがスルリと下がっていく。
私は俯いていることしかできなかった。
けれどその時、はじけたような声が聞こえた。
「私たちのことバラしたのはあなたなの? 答えて。なんでこんなことをしたの?」
顔をあげれば、結愛の背中がある。
今日あんなにも泣いていたのに一生懸命背筋を伸ばして、彼に問い詰めていた。
おろされた結愛のふわりとした髪が、強い日差しで輝いている。
そんな輝きが眩しくて、私はしばらく見惚れていた。
「またそれか。俺じゃない。くだらないこときくなよ」
そんな結愛の懸命な問いかけを、彼は、アキムは言葉少なにはねのける。
それも薄笑いを浮かべて。


