いったい、なにを考えているの……?
彼がそこにいるだけで空気が重たくて、不安から足元が揺らぎそうになる。
棚にきっちりと並ぶ本さえも歪んで見えてきそうで、私は彼の空気に完全にのまれていた。
焼けるような夕日の色に染まっているのに、彼の笑顔は冷たいんだ……。
そんな時、本郷大翔は笑顔をぱったりとやめて真顔になった。
「俺がアキムだ。正体を知ったところでなにになるのか知らないが、所詮はお前らもアイツらと同じっていうことか」
私は息をのんで、そのまま崩れるようにイスにどさりと腰を下ろした。
あまりにあっけなかった。
これだけ待ちわびたこの瞬間が、あんな一言で終わるなんて思わなかった。
本郷大翔が、あのアキムだなんて……。
だから、物知り顔で私に近づいてきたの?
全部知っていて、私を笑っていたの?
なんで……?
私は外へ滲み出そうな悔しさを押しとどめるように、長いスカートをギュッと握りしめた。
私ってバカだ。


