鮮やかなオレンジが、心底疎ましく見えた。
「本郷……大翔くん……?」
結愛が掠れた声で呟く。
名前を出されて真実が、ナイフのように突きつけられた。
入口に立っているひとりの男子を、夕日がオレンジ一色に染め上げる。
まるで、主役にスポットライトをあてているみたいだ。
皮肉だね。
私に、どれだけイヤな想いを味あわせれば、リアルは私を解放してくれるの?
リアルなんて大嫌い。
リアルなんて、どこまでも私を追い回しては弄ぶ怪物のよう。
私は、喉の奥からわき起こる声を噛みつぶす。
ああ、どれだけ追い回して笑えば、気がすむんだろうね。
私はもう疲れたよ。
あの悲劇の後に、こんな裏切りが待っているとは思いもしなかった。
リアルはいつだって、私に予想以上の絶望を与えてくれる。


