「なんで……?」
そんな言葉が唇から弱々しくこぼれていく。
私の顔は完全に入口の方を向いていて、5時ピッタリに訪れた客を目に映してしまう。
目が合うどころではない。
頭から爪先まで全身をとらえてしまった。
なんで、アキムが提示した時間なんかに現れるの……?
なにかがのしかかったみたいに胸が重くなる。
胸の奥がなにかに締め付けられるみたいに苦しくなる。
本当は、この時間に現れた理由をきかなくったって、私は答えを知っているんだ。
でも、心が信じることを望んでいない。
「お前だったのか、アキムは」
新太の低く落ち着いた声が聞こえた。
私はその言葉を耳では聞きつつも、冷静にはなれなかった。
膝の上にある手にはうまく力が入らず、足も床にちゃんとついている感じがしない。
なんでアイツにはいつもいつも、心をかき乱されなくちゃいけないの?


