私の机の横をすり抜けていく彼。
何故か私は、きょとんとしながら彼のことを見上げてしまう。
自然と、彼の方に視線が向いてしまったの……。
すると、颯爽と歩く彼の右目がぎろりとこちらを向いた。
黒い前髪の隙間からのぞく切れ長の鋭い目。
凍てつききったような真っ黒な瞳の奥。
その視線が心に突き刺さり、私はその威圧感から身をうしろに引いた。
彼の雰囲気が、誰も俺に寄るなと言っているようで、見ていることさえも拒絶された気がした。
そんな彼の一瞬の素振りに、不意に胸が高鳴る。
……その瞳になにかを感じたの。
誰も寄せ付けない、強さのようなもの……。
ここにいるどの人間も持っていない、孤高の強さを……。
私は通り過ぎる彼に、見惚れてしまった。
私なんて比べ物にならないほど、彼の心は冷え切っていそうだったから。


