私は痛む脇腹をおさえながら、力がほとんど残っていない体を起こした。
隣には広いスペースが空いていて、その向こうにはいまだに結愛が仰向けで寝そべっている。
結愛のふわふわした髪は乱れてコンクリートの上に這うように広がっている。
ベージュ色のがーディガンに通された腕は、目元に押し付けられていて、微かな嗚咽が漏れ聞こえてきた。
少し目線をあげればフェンスの前に新太の姿があった。
指をフェンスの網目にかけていて、フェンスのきしむ音も聞こえてきた。
私はため息をつく。
眼下に広がる家々はまるで安っぽいミニチュアのようで、この地上を綺麗にうめ尽くしている。
上を見上げれば、秋特有の青くて澄んだ高い空が頭上いっぱいに広がっていた。
オモチャみたいな家も、まっ青に塗りつぶしたような空も、子供が数分で描きあげた絵のようだ。
もう笑えてくる。
こんなくだらない作りものみたいな世界で、私たちは翻弄されているんだ。


