私は俯いて、汚れた手の平を爪の痕がつきそうなくらいきつく結んだ。
「なにを言ってるんだよ! じゃあ、この黒板の文字はどう説明する? それに、羽咲はそんなヤツじゃない」
撃ち抜かれるように胸へ響いて、焼けるように熱くなる。
私は下を向いて、急いで両手で顔を覆う。
声を、涙を堪えるのが大変だったんだ。
いつも、委員長の気遣いは邪魔なものでしかなかった。
だけど、私のことをこんな風に言ってくれるなんて思いもしなかった……。
秋穂の声は、今はもう唸るような声しか聞こえない。
私の顔を覆う手の内側は、涙でびっしょりと濡れていて、土臭かった。
「おい、今のうちに行くぞ。こんなとこいられないだろ」
でも突然、顔から手が離され、腕を勢い良く引かれた。
新太のかたい手の平が私の腕を掴んでいて、風を切って走っていく。
一方の手は結愛の肩を支え、もう一方は私の手を引いて、私たちを笑っていたヤツらの間を新太は広い背中を見せながら駆け抜ける。
けれど私は、横目にいつまでも、凛々しい顔をした委員長を映していた。


