わけもなく、ぼたぼたとしずくが零れ落ちていく。
気づけば、茶色い床には私がこぼしたしずくによって、小さな水たまりができていた。
私は必死にそれを止めようとして、慌てて頬の涙をはらう。
「あのね、委員長、別にそういうことじゃないんだってば……。えっと、ほら、この子が勝手に暴れまわったんだよ。いつもよくわからない子じゃない。私たちも驚いちゃって」
頭上で、秋穂の歯切れの悪い声。
私の目の前にある秋穂の白い上履きには、食い下がるように力が込められている。
最後はもう媚を売るしかない秋穂。
でも、一軍ならウソをついていても媚を売ればどうにかなるんでしょ……。
悔しさにわなわなと震える手で、床にできた小さい水たまりを拭う。
そのあとすぐに手の平を見れば、濡れた砂埃が指紋の筋に入り込んで茶色く汚れていた。
それをじっと見ていたら、また胸がつまった。
私なんてこんなものだよ、秋穂とは違ってこの砂埃みたいに汚くて価値がない。
でも、一軍の秋穂の言葉には価値があって、みんなに信じられるの……。


