だから私は結愛みたいに取り乱すこともできず、無感情にこの状況をみることしかできないんだ。
けれど、耳を澄ますと教室のいたるところで、スマホの短いアラート音が聞こえ出した。
次々と感染していくように、いくつもの音が重なっていく。
人間の声よりも、その電子音に教室内がおかされる。
私はその光景に目を見張った。
席についているヤツも、壁に寄りかかっているヤツも、周り中の生徒がスマホを片手に持ち、笑顔で画面だけを見ている。
誰も声はあげない。誰も私を見ない。
みんな、夢中になって画面をタップしていて、アラートの間隔は早くなる。
画面の上を滑る動きの速い指はまるで早口で陰口をたたいているようで、声も出さずに浮かべられた数々の笑みは私の胸をしめつけていく。
私は思わず耳をおさえた。
やめてよ、もうやめてよ……。
アラート音の大群がこの教室内に強く渦巻いて、あっという間にのみこんでいきそうなの。


