「アンタ、まだわかんないの? 鈍感なわけ? アキって、馴れ馴れしく呼ばないでよ」
秋穂は背もたれに寄りかかり腕組みをして、彼女のことを睨み上げていた。
「ご、ごめんね。今度から直すから……」
「ていうか、今更なんの用? こっちはアンタの顔も見たくないし、口もききたくないの」
そう言われて、泣き出しそうに下唇を噛む女の子。
「ねぇ、秋穂に近づかないでよ。秋穂、誰のせいで傷ついたと思ってんの?」
今度は取り巻きのひとりの気の強そうな女子が、その女の子の肩を突き飛ばしながら言い放った。
「リコやめな。価値ないから。アンタ、またドロボーすんの? 今度の狙いはこのブレス? 本当に性格悪いね。早く目の前から消えなよ」
秋穂の最後の一撃で、その女の子は教室を飛び出していった。
クラス全員がそのやりとりを見ていたようで、あちこちでヒソヒソ話が始まる。
秋穂たちは目尻に涙がたまるほど笑い転げていた。


