キズだらけのぼくらは



そんな時、廊下の方から大きな鈍い音が聞こえてきた。

私はその音に弾かれて、鋭くあたりを見回す。

自分が見られていたのだとしたら、まずい。

でも、廊下に目をやった私は息をのんでかたまった。

そんな私の存在にも気づかず、足並みをそろえた女子たちが短いスカートの裾を大袈裟に揺らして行き過ぎる。

薄暗い廊下に浮かび上がる、魔女のような意地の悪い笑みに歪んだ顔。

先頭を行くのは紛れもなく、秋穂だった。

廊下の奥に消えていく秋穂たちの姿。

いくつも重なって聞こえる図太い足音は、いやらしくいつまでも反響していた。

私はそのうしろ姿を見送ってから、胸が重くなった気がした。

だって、秋穂たちだったということは、あの音をたてた主は簡単に予想がつく。

その当人と、バチリと視線がぶつかり合う。

私からは遠い廊下の隅に、ぽつんと座り込んでいる女の子。

彼女は眉をハの字にして笑いかけるんだ。

そんな苦しそうな顔をする子、結愛以外にはいない。