じゃなきゃ、私にあんな目をする必要がある?
彼に取ってもらった本をふと見れば、大昔の偉人が涼しげな顔をていて、私は下唇を噛んだ。
結局私は、いまだにアキムの手の平の上で踊らされているんだね……。
「ねえ、なにを見てるの……?」
感傷に浸っていると、遠慮がちな結愛の声が耳に入ってきた。
横目でふたりがいる方を見ると、彼は本から目を離して外に視線を投げている。
彼の白いワイシャツの背中は頼りなく窄んだように見え、彼らしくない。
私はイスから腰を浮かし、窓の向こうにあるものをのぞきこんだ……。
すべて納得がいった。
言葉もなく、立ちすくんでその光景を見る。
彼には辛すぎる光景だ。
土ぼこりがたつ茶色いグラウンドに、くっきりと光る白いベース。
その瞬間、空気の入れ替えのために開けていた窓から風が舞い込み、レースのカーテンを一瞬にしてバッと舞いあがらせた。
そして同時に、バットの軸にボールがヒットした高い音がこの部屋にまで駆け抜ける。
頭の芯まで打ち抜かれそうな、空にまで突き抜ける音が……。


