キズだらけのぼくらは



右手を本へ向かって目いっぱいに伸ばす。

でも、指先は背表紙にかろうじて触れるほどしか届かず、左手で本棚の縁につかまって、懸命に背伸びをするものの、まったく手が届かない。

もう腕がちぎれそうなくらいに伸ばしているのに、本は更に棚の奥へと押されていくばかり。

なのになぜか、必死に伸ばしている私の手に、目当ての本が掴まされていたんだ。

気配を感じて顔だけ振り向けば、私の背後から軽々と棚へ手を伸ばしているメガネの男子がひとり。

「ブラック……!」

思わず声が漏れる。それも、ネットでのネームを。

とっさに口をおさえるけれど、間近にある彼の顔にドキリとしてすぐに前を向いた。

私がそうしている間にも彼は一言も言わずに遠ざかっていくけれど、私はまだ動揺中。

壊れものを扱うみたいにそっと、右手に掴ませてもらった本を胸の前に持ってくる。

様々な偉人が描かれたセピア色の本。

私は徐に表紙を手の平で撫でながら、考え込む。

彼は、なんであんな風に生きているんだろうかと……。