キズだらけのぼくらは



頭の中がまっ白になって、その言葉に凍りついている私。

私の頭の中と同じように白い廊下には、今もまだ鈴のような声で宣言されたその言葉が漂っていそうで、彼女の真意もつかめない。

イヤな予感しかしなくて、思わず結愛の瞳をのぞきこんだ。

「まさか、秋穂たちの分までやってやるつもり?」

いまだに秋穂との関係を断ち切れていない結愛は、本当にあの無茶な命令に従うの?

長いブラウスの袖を手でギュッと握っている結愛はなかなか言葉を発さない。

口を閉ざしたまま、まっ白な廊下に足をそろえて立っている。

そしてやっと、首を縦に振るような動きで俯いた。

私はただただ息をのむだけで、言葉を出せないでいると、結愛はこう言った。

「成績が良くない私は、自分の分だけで精いっぱいに決まってるじゃん。それに、桃香にもらった忠告を、私、理解はしてるんだよ。ほら、桃香行こう」

そう言って、結愛は私の手を引いて歩きだす。

でも私は、歩きだす前に結愛の顔が切なげに歪んだのを、しっかりと目に焼きつけてしまったんだ。