キズだらけのぼくらは



私が首を傾げて睨んでも、彼は肩まで震わせて笑うことをやめない。

「悪かった悪かった。いや、本当に女っていうのは、そういう噂好きだなと思ってさ。それにお前までそれに喰いつくとは、お前もなんだかんだ言いつつ女なんだなと思ったんだよ」

彼は唇にまだ笑みをたたえたまま、余裕たっぷりに私へ視線を向ける。

「なに、それ。私をバカにしてるの!?」

その物言いに、つい声を荒らげる。

なのに、また鼻先で笑い、涼しげな切れ長の瞳の隅で私を見透かすんだ。

「お前、キスもまだだろ? 俺が教えてやろうか」

聞いたこともない声が、私の耳をくすぐる。

甘くて、強引で、でも優しい声に体が熱くなる。

驚いて目を見開いている場合じゃなかった。

気づいた時には腕を引かれ、目の前には彼のたくましい首筋。

私は大きく体勢を崩して、彼の腕の中。

雨のあとがしっかりとしみついている体育館の壁に寄りかかる彼に、私が前から覆いかぶさっている。