起きているのに、寝たふりをしているなんて、どんなに意地が悪いんだ、コイツは。
私は内心そうやって悪態をつきながら、怖々彼の顔に視線を向ける。
「い、いつから、ここにいたの……?」
怪しみながらそう問いかければ、彼は気だるそうに瞼を半分ほど持ち上げて、私をとらえる。
その瞬間、私の心臓は大きく一度反応して、すぐに目を逸らした。
彼の目がなんか大人っぽくて雰囲気が違うから、不覚にもドキッとする、こんなヤツに……。
「お前らがメシ食い始めたころから。お前にもつるむヤツがいたなんて、意外だな」
はっ……?
彼の言葉に私は眉をひそめ、思いきり非難の目を向けた。
右手では、アイツによく似て根が深そうな性質の悪い雑草を憎しみをこめて引っこ抜いてやった。
「随分といい趣味してるじゃない。女同士の話を盗み聞きするなんて」
その言葉とともに、根に土がついた雑草を力任せに投げ捨てる。


