リンゴに、シャリッとかじりつく爽快な音がする。
私は同じポーズで弁当箱を持ったまま、思わずきょとんとして彼女を眺めてしまった。
彼女は、ひとしきり泣いた後にケロッとしちゃう子供みたいに、気持ちよく笑っている。
瞳は涙ではなく嬉しさに輝いて、さっきよりもずっと綺麗に煌めいている。
彼女は虹みたい……。
そう、雨が上がった後にかかる、あのかわいらしい虹。
ポスターみたいに安っぽく見えていた空は、一瞬にしてクリアな青色に輝いた。
「あのさ、モモちゃんっていうのはやめてくんない? 私、そんなキャラじゃない。桃香って呼び捨てでいいから」
桃ちゃん、なんて自分で言っていて恥ずかしくて、顔が赤くなりそう。
でも私は、綺麗に輝く高い空を見上げ、かつての親友に呼ばれていたものと同じものをリクエストした。
昔と同じようになりたくはないけど、今はそんな気分だった。
なんだか彼女は、小動物みたいでにくめないんだものって心の中で思って微笑む。
「じゃ、じゃあ、桃香っ……。私のことは、アンタじゃなくて結愛って呼んで……」


