私たちは無言で昼食をとりつづけた。
彼女は無理矢理におにぎりを口へ運び、私は弁当箱の隅を箸でつつく。
そんな虚しい音が響く中、弁当箱の中にはうさぎリンゴが残っていた。
恥ずかしくてたまらなかったこの赤い皮の細工。
でも、今にも跳びはねそうなこのうさぎは嫌いじゃないかもしれない。
「ねえ、よかったら、これあげるけど」
無愛想に差し出した弁当箱。
足元に向けた視線には不規則にざわざわと揺れる雑草が映っているだけ。
こんなことをするのは何年かぶりで、どうしたらいいのかよくわからないんだ……。
長い沈黙が落ちる。
雑草のくせに私を笑うみたいに音をたてつづける。
さすがに、振り絞った勇気も底をつき、勢いよく突きだした手をきまり悪く引っ込めようとした。
けれど、こんな言葉が私を引きとめたんだ。
「ありがとう、モモちゃん。いただきます」


