キズだらけのぼくらは



「空が嫌いな人はいないでしょ? みんなに愛されて、みんなを包み込む優しい空……。私もそんな風になりたくて、ハンドルネームをソラにしたの」

彼女は左手を目いっぱいに伸ばし、空に手の平を向けた。

その白く細い腕は少しも空になんて届くはずがなく、私の目線の先にある体育館の屋根の方がまだまだずっと高い。

自然のまっ青な空は、彼女には残酷すぎるくらい、突きぬけるように高かった。

そして、ピンクのリストバンドは空の青によって余計にひきたてられる。

私にはなんとなく予想がついてしまっているそれが目立つのは、なんだか皮肉っぽかった。

「でも、全然なれてないね。それどころか、親友の好きな人を奪って、親友をキズつけた」

力なく腕を下ろし、俯いた彼女。膝に置いていた歪なおにぎりは、バランスを崩して倒れる。

「アキとは中学時代のクラスメイトで、3年の時アキには好きな人がいたの。私は親友として、アキの恋を一生懸命応援してた」

彼女は大切な思い出をひも解くように遠くを見つめながら、目を細めた。