なのに、彼女はまた情けなさそうに微笑むの。
人が良さそうに目尻を下げて……。
その時、私たちの間に風が勢いよく吹き抜けた。
細い髪がバラバラに舞い上がって、日にあたった髪は綺麗な栗色に輝いた。
所々金色に近い鮮やかな光を放って、宙で踊っている。
そんな美しい髪に私は釘づけになっていた。
けれど、その鋭い毛先は彼女の頬を引っ掻いていく。
乱暴に、縦横無尽に、痛々しく。
なのに彼女は、その散らばる髪の奥で表情ひとつ変えずにいたのだ。
「私が悪いんだよ。アキは、悪くない」
舞っている髪を抑え込もうともしないまま、彼女はいまだに苦笑いを続けている。
今、私の目の前にあるものは、全部がウソに見えた。
空は青い絵の具をただべた塗りしたみたいに薄っぺらく、足元の緑は色紙で作ったみたいで命を感じられない。


