こんな時まで本が大事?
やっぱり秀才くんも普通じゃない。
腹立たしくてたまらず、机を手のひらで思いきり叩いた。
手にしびれるように走る痛みに顔をしかめたけど、私は大声で言う。
「だから、人の話をっ……」
「あっ、あの、オフ会ってここであってますかね……?」
でも、愛らしくて気弱そうな声が背後からして、私は言葉を途切れさせてしまった。
私はその声に導かれるようにそっと振りむいた。
また私は息をのむ。もう私にはわけがわからない。
学校の人間とまでは推測しても、同じクラスの人間が集まるなんて少しも想像しなかった。
細い脚に短いスカート、左手首には袖口にピンクのリストバンド。
耳の下で結んだ髪はふわふわで、目はぱっちりと大きく小動物のような顔をした女の子。
女子トイレでひとり泣いていた子を思い出す。
目の前でか弱く首を傾げてオフ会のことを尋ねているのは、秋穂にいじめられていた女子だった。


