私は息を整えてうしろを振り返ったけれど、階段にはさっきの先輩の姿はもうなく、私と同じようにのぼってくる生徒は見えない。
他のメンバーはくるのだろうか?
私は訝しがりながらも図書室の前まで慎重に近づいた。
さっき走ったおかげで、ぐちゃぐちゃにもつれていた思考回路がすっきりしている。
図書室の戸の前についた私は、戸の上半分にはめこまれたガラスから中の様子をうかがった。
「……あっ」
うっかり声をもらしてすぐに息をのみ、ガラスから見えないよう即座に頭をしまう。
なんで、あの人がいるの……!?
恐る恐る、またゆっくりと中をのぞき見る。
縦に3列並べられた長机。その中でも入口に近い席。
イスに腰掛けている男子の白いワイシャツが無駄に存在感を放つ。
その男子の手には読書中の文庫本。
華奢そうなメガネフレームが際立つシャープな横顔。
間違いなく、うちのクラスの秀才くんだ……。


