夜空には、大きく欠けた月があった。
割れてしまったクッキーが、宙ぶらりんに夜空に下げられているのだろうかと思えてしまうくらい、安っぽく見える。
どことなく、私に似ている気がした。
なにかが足らなくて、なにかウソっぽいところが。
でも、いくら考えたってその“なにか”はわからないし、私にはきっと手に入らないものなんだ。
けれどふいに、スマホのアラートが鳴って、私はヒヤリとした。
画面をタップして確認すれば、ブログにメッセージがきたという知らせ。
でも私は、暗がりの中で光るスマホの画面に目を凝らす。
この名前を見れば、訝しがりたくもなる。
差出人欄に、アキムの名前。
今更、なんの用があるっていうの?
しばらく姿を現さないから、もう消えたのかとさえ思っていた。
こうやって断続的に、人の心を弄んで楽しいの?
私は窓を背にしてその場にへたり込んだ。