「もう、お昼になっちゃうなあ。
あそこのスープカレーの店、12時になった途端、サラリーマンが大挙して押し寄せるんだよ。
店が混む前に行って、美紗に食べさせたいのになあ…」
今日、誠は有給休暇をとって、美紗の六ヶ月健診についてきてくれた。
すこぶる順調だし、ただの健診だから、来なくていいと言ったのに、「有給が余っているから」と言って。
健診の帰りに、誠お勧めのスープカレーの店に二人で行くつもりだった。
誠のいる営業課では、何人かがスープカレーにハマっているという。
「混んでてもいいよ。
順番待ちすればいいじゃない。」
そう言って、美紗が誠の手を握ると、誠はにこっと笑い、美紗の隣に座った。
「そうだね。じゃ、三人で待つか」
誠は右腕を伸ばし、美紗の少し膨らんだワンピースの腹にそっと手のひらを当てた。
美紗の妊娠を誠に告げてから、美紗の周辺は嵐が来たかのような騒ぎになった。
娘の美紗の婚期を心配していた博多の母は、特に大騒ぎした。
取るものもとりあえず、横浜に戻ってきた。
一泊二日のトンボ返りで。
「美紗、おめでとう!良かったね!
誠さん、素敵な人ね…お母さん、安心したわ…」
急に花嫁の母となり、初孫が生まれる喜びに感極まり、美紗達の前で涙を流した。

