「ありがと….ヒカル」


美紗が頬の涙を手を拭おうとした時。

全部の指がバスタオルから離れてしまい、それは音も立てずに床に落下した。


「あっ…」


二人同時に声を発した後だった。




いきなり、ヒカルが裸の美紗を、ぐいと抱き寄せた。


ヒカルの両腕は、美紗の素肌の背中に回され、ヒカルのラガーシャツごしに、二人の身体が密着した。


抗うこともせず、美紗はそのままヒカルの胸に顔を付ける。


ヒカルは目をつぶり、怒った声で美紗に言った。


「バッカじゃねーの?
お前、一応女なんだから、そんなもん見せんなよ。俺、弟だぞ!
目つぶってるから、服来てこいよ!風邪引くじゃねーかよ!」


恋人同士のように抱き合う格好で、美紗も目を瞑ってヒカルのかすかな汗の臭いと熱い体温を感じた。

冷え切った身体の美紗に、それはとても心地よかった。


「…お前の身体、冷たくなってるじゃん…」


ヒカルは囁くような声で言った。

ヒカルの腕は優しく、ひんやりとした冷気から美紗を守ってくれていた。


「…じゃあ。
ヒカル、腕、離してくれる?
とりあえず、バスタオル拾うから。
このままじゃ動けないし」


美紗も目を瞑ったまま、くすり、と笑った。