苦しくてたまらず、涙が出てくる。
真冬の冷気が剥き出しの美紗の肩口を撫でる。
濡れたままの髪が凍りつきそうに冷たかった。
(もう、嫌だ…誰か助けて…)
少しでも暖を求め、美紗は暖房便座に身体を押し付ける。
(私、どうしたんだろう…)
こんな吐き気は初めてだった。
食中毒になるようなものは食べていない。
金曜の宴会の食事が原因と考えるには、時間が立ち過ぎている気がした。
(…もしかして…もしかしたら……)
大幅に生理が遅れていた。
車の中で交わった時、避妊具を使わなかった。
吐き気。
符合する三つの事柄に美紗は愕然とする。
バスタオルを巻いた自分の腹に手を当てた。
…もし、そうだったとしたら。
誠は、どんな風に言うだろうか。
結婚の話などせず、美紗の母にも会いたがらない誠。
もし、拒否されたら…
いいようのない恐れと不安に身体が震え出し、また激しい吐き気に襲われた。
オエッと大きな声を立てて便座に
頭を突っ込むような姿勢でいる時だった。
「美紗….どうしたんだよ?」

