一番いいのは、

『ふうん…そうなんだ』

というような当たり障りのない
返答だと思っている。


思慮深い性格なんだ、と思う。





横浜港と山下公園の夜景が
一望出来るフレンチレストラン。


コース料理が終わり、デザートのフォンダンショコラを食べながら、美紗がこの話をすると、三ツ木誠の反応は、予想を遥かに超えるものだった。


「…実はさ、俺もバツイチなんだ。
子供が一人いる。
女の子で4歳。
前の奥さんが育ててる。
離婚したのは、三年ぐらい前」


「えっ……」

いきなりの告白に美紗は、砂糖を入れたダージリンティーをいつまでもスプーンで掻き回していた。



バツイチ。

今日び、そんなもの珍しくも何ともないけれど、バツイチの男性とデートしたのは初めてだった。


「黒木さんのお母さんが
浮かれる気持ち分かるよ。
離婚した時は、自分は一生不幸なまま終わるんじゃないかって思ったから」


三ツ木は、うつむき加減にカップの
紅茶を啜った後、美紗の目を真っ直ぐに見て言った。


「お母さん、良かったね!
いい人に巡り合えて」