夜10時頃、誠の車で送ってもらい、帰宅した。
「ただいま…」
真っ暗で静まり返った室内。
やはり、ヒカルはいなかった。
「36,3度かあ…熱はないけど、シャワーだけにしよう」
脇に挟んでいた体温計を見て、美紗は呟く。
風邪薬と胃薬を飲んで、誠の部屋で休んでいたから、少し調子が良くなった気がした。
ーー昼間、エッチした時はなんともなかったんだけどなあ…
美紗は布団を被って言った。
ーー今夜はこのままうちに泊まって、明日は会社休めよ。うちで寝てろよ。
誠はそういったが、明日月曜、仕上げなくてはならない仕事がある。
それに、新年会の醜態の件で恥ずかしくてズル休みしたと思われるのも嫌だった。
風呂から上がり、髪をバスタオルで拭いている時だった。
「…ウッ…!」
突然、猛烈な吐き気が美紗を襲った。
大急ぎでトイレに駆け込み、便座の前にしゃがみ込む。
昼から何も食べていない美紗の胃からは、吐きたくても、吐くものがなかった。
それなのに、込み上げてくる吐き気は収まらず、美紗の身体は喉の奥から、ぐえっぐえっと声ではない音と胃液を出しながら、何かの異物を拒否し、押し出そうとする。

