隣の女たちは、完全に美紗たちの話を聞いていた。
はアッ……という言葉にならない溜息が聞こえてきたからだ。
美紗も空いた口が塞がらなかった。
ーーくすんくすんと、か弱い乙女のように泣きながら、すごい事言ってる…
「とにかく、ここは出て、ドラッグストアで検査薬買って、どっかでやろう。
話はそれからよ」
女たちに見せるショーはここまでだ。
美紗は、素早く伝票を掴んで立ち上がった。
…びっくりした。
美紗がドラッグストアのレジで、店員に妊娠検査薬を入れた買い物カゴを差し出すと、横からすかさず、亜美がヘアワックスと制汗スプレーを美紗のカゴの中に放り込んだ。
(……!)
美紗は目が点になった。
店員は同じカゴに入っている商品だから、バーコードを読み終えると美紗に合計額を告げた。
しかも亜美は店員に
「袋、別々にして!」と言った。
「お姉さん!亜美、お財布の中にお金入れ忘れちゃった。
定期あるから電車は大丈夫なんだけど、これのお金貸しておいて。あとで返すから」
店を出たところで、亜美は言った。
「亜美ちゃん、それならそれで先に一言言ってよ」
亜美の品物二点の合計は、検査薬より高かったから、美紗はムッとした。

