亜美は一瞬、付けまつ毛の目を見開いた。
美紗が浮気を知っていることに、驚いた様子だった。
「うん…」
こくり、と亜美は小さくうなづいた。
「それで、ヒカルに全責任を押し付けるのは、ちょっと酷いんじゃない?
一人で検査するのが怖いなら、私が付き合うよ。
妊娠検査薬買ってあげるから、今すぐ、試さない?」
亜美は下を向いて、ぐすっと鼻を啜った。
「……亜美…」
テーブルに両肘をついて、手のひらで顔を覆った亜美は、シクシクと泣き出した。
隣の席の、正装した中年女の4人グループが何事かと美紗達をちらちらと見ていた。
ちょうど、亜美の母親くらいの世代だろう。
内心、美紗は慌てたが、平静を装い、女たちの好奇の視線を無視することにした。
泣きながらも、亜美は自分のまつ毛が涙で取れないように意識して指先で抑えていた。
「亜美、ヒカルのことが好きで好きでたまらないの…
それなのに、ヒカル冷たいんだもん。
あんな男、浮気なんかじゃないよ…
ノリいいし、気が合うなって思ったから、一回ちょっとやっただけ。
俺、すげえテクなんだとか言って、しつこい割りにヘタクソだったし……
おまけに帰り際、ラブホのお金、ないとか言い出して、亜美が払う羽目になったし…」

