自立の手段としてとはいえ、精神的にも肉体的にもハードな看護の仕事を自ら志願する亜美を、美紗は年下ながら、偉いと思った。
亜美はナポリタンスパゲティを三分の一、残した。
「ごめんなさい…最近、食べられないんだ。お腹は空くんだけど…」
夕飯をおごってあげる、と美紗が言ったからか、亜美は済まなそうに上目遣いする。
「…やっぱり、出来てたの?」
美紗が訊くと、亜美は目を伏せた。
「まだ、検査薬使ってないから
わかんない…」
亜美は10歳以上も歳上の美紗に全く敬語を使わなかった。
最初は、少し無礼に感じていたが、一緒にいるうち、気にならなくなってきた。
亜美は時々、人の顔色を伺うような目をした。
その目を見ていると、何か憎めない気になった。
美紗は、食べ終えたボンゴレの皿を隅に押しやり、テーブルの上で腕を組んで身を乗り出した。
言いづらいことだけれど、そろそろ、本題に入らなければならない。
「亜美ちゃん、ヒカルが言ってたんだけど。
あなたが浮気したのなら、妊娠したとしてもヒカルの子供だとは限らないよね?」

