ヒールが5センチ以上ありそうなそれに、美紗は眉をひそめる。
(これが妊娠してるかもって悩んでる子の服装なの?)
椅子に座ると、亜美は美紗と向かい合いながらも、自分のバッグから手帳を取り出し、ゴテゴテとピンクのラインストーンのついたボールペンで何かを書き付け始めた。
その手帳の表紙と裏表紙には、隙間なく、びっしりとプリクラのシールが貼られて、それを見た美紗は改めて亜美の若さを思い知らされる。
「今、亜美、横浜の総合病院で実習してるんだ」
手帳をバッグにしまいながら、亜美はそこでの実習がいかに大変であるかを美紗に語り始めた。
「チョー意地悪看護師がいてさー、何かあると、亜美に絡んでくるんだよねえ。
亜美、目ぇ付けられててさあ、声が小さくて聞こえないわよ!とかいうの。
そっちが難聴なんじゃね?て思うけどさー。
絶対言えないし。
採血実習でも、嫌味死ぬほどいいまくりだし!
そういうのに限ってドクターがいたりすると、態度コロっと変わるんだよねー」
「へえー」
美紗にとって、医療の職場など無縁の世界だ。
亜美の話はとても興味深かった。

