いつの間にか、ヒカルがビールを飲める年齢になり、髭を生やすようになったのと同じように、いつの間にか彼の精神面も変化しているのに、美紗は気付かされた。
「…そういえばさあ」
ヒカルがニヤリと笑った。
「美紗さあ、二週間くらい前の土曜日、横浜行っただろ?」
「えっ…それが何?」
ギクリとした。
誠と飲みにいった時だ。
「俺は友達と一緒だったんだけど。
電器屋の前歩いてたら、なんか、すげーいちゃついてるカップルが前から来るなと思ってよく見たら、美紗だった。
恥ずかしいから、やめてくれる?」
多分、ビアレストランからの帰りだろう。
あの時、何種類かのビールを飲み比べしているうちに美紗は楽しくなってしまってつい飲み過ぎてしまった。
誠と腕を絡め、べったりしなだれかかるようにして歩いていたはずだ。
そんな姿を弟に見られるとは。
顔が熱くなった。
「い、いいの。私のことは。それよりヒカル、あんたのことよ」
焦りつつ、美紗は手のひらでヒラヒラと自分を仰ぐ。
「俺?大学のこと以外に?」
ヒカルは、目を見開いた。

