誠からメールが着ていた。
着信ランプが点滅しているのを、
美紗はずっと放置していた。
[なぜ、怒っているの?]
短いけれど、誠が美紗の態度に戸惑っているのが分かった。
ーー言えるわけがない。
求婚してくれないから、なんて…
美紗は自分の携帯を手に持ち、ヒカルの横にドサッと乱暴に腰を下ろした。
「馬鹿ね。痴漢って、そんなわけないでしょ。
目が疲れただけよ。
それより、あんた、ちゃんと学校行ってる?教習所はどうなの?」
いつものうるさいお目付役の姉に戻って強気な口調でヒカルに訊いた。
「一応、どっちも行ってるよ。
今度、仮免、受けるよ。
サークルは辞めた分、バイト増やしたから、結構ハードだね」
ヒカルは立ち上がり、キッチンに向かった。
「バイト増やしたの?
ファミレスの他に?何やってるの?」
美紗は、矢継ぎ早にヒカルの後ろ姿に問いかけた。
つい、うるさい感じになってしまう。
「宅配便の仕分け。
きついけど、夜は時給いいんだよね」
冷蔵庫を開け、美紗に背を向けたまま、ヒカルは答えた。
スリムなヒカルは、長袖の赤いTシャツがブカブカに余っている。
それでいて、丈はちょうどいい。

