「もう、なんでチェーンなんてしてるのよ…必要ないでしょ」
玄関の三和土で、美紗がパンプスのベルトを外そうと屈むと、赤いリボンの付いたミュールが置いてあるのが目に入った。
「えっ!」
美紗は衝撃を受けた。
もう深夜12時近いのに。
(こいつ…そういうことか。
私が外泊すると思って、女の子連れ込んでたのね…学生のくせに)
「友達来てるんだ。
もう帰るとこだけど」
愛嬌のある丸い目を瞬かせて、取り繕うようにヒカルは言い、リビングのドアを開けた。
合皮のベージュのソファーに、若い女の子が座っていた。
女の子は美紗を見るとぺこりと頭を下げたが、何も言わなかった。
彼女の裾の方がクルクルと巻かれた黒髪のロングヘアは、上の方がくしゃくしゃに乱れていた。
女の子はヒカルの同級生だろうか。
とても若い。
胸の谷間が覗くぐらい襟ぐりの開いた黄色のTシャツに、黒いミニのフレアスカートを履いていた。
動揺しながらも、平静を装い、美紗も少し頭を下げた。
部屋に入った瞬間、美紗は、ある種の臭いを嗅ぎつけていた。
直感した。
(やだあ。この子たち…
ここで何かやっていたな…)

