【完】結婚からはじまる恋《1》

入り口の直ぐそばにある部屋が応接室。



旧華族らしい明治時代を漂わせる調度品の数々。


使用されていない暖炉の上の鹿の剥製の壁飾りが目を惹く。



天井まで続く格子の硝子窓の向こうはすっかり闇に染まり、綺麗な庭が全く見えなかった。



「…お前…来てたのか…」



「はい」



黒の革張りのソファに腰を下ろす頼さん。


長い足を組み換えて、私をジッと黒曜石の瞳で見つめる。




「近藤お前は席を外せ」



「夕食の準備は整えておりますので、話が終われば内線でお知らせください」




「わかった」



近藤さんは部屋を出て行った。