あの時キチンと自分の病気を告げれば良かった。



そうすれば、社長だって無茶なコトは言わなかったと思う。



でも、正直言って…そのまま話を畳み掛けられなかった。


もっと…頼さんに近づきたかった。

彼は私を拒んでいたけど。
私は嘘でも受け入れて欲しかった。






瞼の奥が熱くなって…


目の前の頼さんの顔が霞んで見える。



「深…幸…」



優しく甘いテノールの声が私の涙腺を揺さぶる。



塞ぎ止めていた涙腺が崩壊寸前。



頼さんは私の瞳に溜まった涙にそっとハンカチで拭ってくれた。



「お前…このまま…帰れ」



「嫌です。頼さんと一緒に居たい…」