私は彼の背中を必死に追う。



シルバーのベンツの前で止まった。



「ほら」



頼さんが助手席のドアを開いた。



「ありがとうございます…」



私は遠慮がちに助手席に乗り込んだ。

このベンツが頼さんの私用車らしい。


頼さんは運転席へと乗り込む。


「…シートは適当に動かしてくれ」



「はい」



爽やかな柑橘系の芳香剤の匂いが車内に漂う。



頼さんはギアをドライブに入れて、サイドブレーキをゆっくりと下ろす。