「いや、でもまさか‥」

一人でブツブツ呟いてる仁を見ると、奈々を見つめながら「あの女が‥いや、でもこれは‥確かに‥」と一人事を言っていた。


「仁、どうした?」

俺の声でハッとしたのか、
「あ、すいません。あの女の手がかりなら‥もし、これがそうなら手がかりはあります」

その言葉の意味が分からなかった。


「何を言ってるんだ?」


「奈々ちゃんのジャケットを見て下さい」


ジャケット?
見ても何ともない、ただの黒いライダースジャケットそのもの。
何を言ってるんだ?


「後ろです。背中‥」


奈々の背後に回って見てみれば‥俺は目を見張った。

食い入るように

ただ、そのジャケットを見つめていた――‥


「まさか‥」

「‥でもこれは‥間違いありませんよね?」

「あぁ‥顔は知らなかったが、こいつはそうだな」

奈々は"?"を浮かべて、俺達の顔を見比べていた。


「マリア‥か」


このジャケットを羽織るのを許されてるのはただ一人――‥