オッサンは少しばかりの期待があったのだろう。
あからさまに期待はずれの顔をして、去っていった。
そのトボトボとした小さな背中を見送って、近くにおいてあったオレンジのジュースを飲む。
ここにあるのはどれもジュースと偽ったカクテルばかりだ。
シュワっとした炭酸が喉を焼いて、流れ込んでいく。
一気に飲んだからか、頭の回転が極端に鈍ったような気がする。
桃が一切れ浮かべてあるお洒落なカクテルも手にとって、お酒を呷る。
「澪亜さま。」
お久しぶりです、と挨拶をされてそちらを見る。
綺麗に巻かれた茶色の髪とばっちりメイク。
シャネルの五番のキツイ臭いが、鼻腔を刺激する。
大人の色気ムンムンの、佐奈川社長夫人だ。



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