誰かに助けを求めても、無駄。




そう、思っていたのに。



「あ?お嬢様か?」

何してんのこんな所で、とちょっと怒った口調で言われた。
嫌味ったらしい言葉。

聞き覚えのない声に顔を上げる。
声をかけてきた男の一人が今だ、とばかりに動き、パシャ、と写真を撮られる。


喜ぶ男からスマホを奪って履歴をすべて消してやった。


ああ、とかいう声は無視に限る。

どうせ変に自慢することにしか使わないのだから。



お嬢様、と言った男を見る。


その顔に覚えが、あった。


瞬間、思い出す、あの夜の事。